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ルイズとその使い魔として召喚された猫耳少女・南波の2人は、学院の温室でキノコ狩りをしていた。 「あったー! ほら見て見て!」 そう言って南波が差し出したキノコは、鼻にツンとくる異臭が漂い傘が蕩けかけていた。 「……真面目にやる気あるの?」 「えー!?」 取ってきたキノコを投げ捨てたルイズに不満そうな南波。 「それにしてもタバサちゃんも来ればよかったのにね」 「用事があるって言ってたから仕方ないわよ」 そう肩をすくめたルイズだったが、最初からタバサを誘ってはいなかったのだ。 「きっと残念がってるから今日の話はしないようにしましょ!」 「ルイズちゃんやっさしー!」 「そっ……、遭難したー! まだ2レスしか経ってないのに遭難しちゃったよ!」 「うるさいわね。落ち着きなさいよ」 「私のせい? 『そうなん』です。なんちゃっ――」 「落ち着けー!」 この状況で笑えないギャグをかました南波に、ルイズは容赦無く魔法で吹っ飛ばした。 遡る事30分前。 南波はルイズの手を取って今にも崩落しそうな崖の先端部に生えているキノコを取りに行き……、 お約束通り崖が崩落、2人は断崖絶壁から落下した。 さらにその下を流れる激流の川に流されて、熱帯性の植物が繁茂するこの場所に漂着し現在に至る。 「ここどこ? ジャングル?」 「私が聞きたいわよ!」 ――グキュルルル~…… 朝食から数時間、そろそろ昼時という事もあって南波の腹の虫が盛大に泣き声を上げた。 「お腹空いたなあ……。そういえば、さっき崖で取ったキノコ……」 南波が懐からキノコを取り出した瞬間、ルイズはそれを神速の速さでひったくり、 「! ……あんたほんっとーにキノコを見る目が無いわね! この毒々しい色、臭い! どう見ても毒キノコよ! こんなキノコのために私達遭難したの!?」 しかし南波はそんなルイズの言葉に耳を貸さず、 「……ルイズちゃん。そう言ってこのキノコ独り占めする気なんでしょ!」 「!?」 と一口で丸呑みしてしまい、案の定、 「お……、美味しい……」 ばったり倒れ伏してしまった。 「嘘おっしゃい!」 キノコの毒を受け、南波は脂汗を垂らしつつうんうん呻いている。 「大変!! 凄く苦しそう! 毒キノコを食べた時の治療法は……」 ルイズは慌ててなぜか持っていたサバイバルに関する書物から治療法を得ようとするが、その内容は彼女の想像を超えていた。 「……じ、人工呼吸!?」 思わず赤面するルイズだったが決意を固め……、 「そうね、今は一刻を争うんだから仕方ないわ……こ、心の準備が……」 ……たものの、やはり照れからか顔を背けてしまった。 「よし、今度こそ……」 「あ~、死ぬかと思った!」 今度こそ人工呼吸をと思った瞬間、何事も無かったかのように南波がむっくり起き上がった。 「治るの早いわよ!」 「???」 「ルイズちゃん、ごめんね。まさか本当に毒キノコだったなんて……」 「まあ、体が何ともないならいいんだけどね」 体調は回復したものの空腹までは回復しなかったようで、南波は何か食料が無いか周囲を見回していた。 「あ~、お腹空いたなあ……バナナだ!」 とある木にバナナがなっているのを発見はしたものの、実には到底手が届かない。 「でも高いなあ。あ、棒と箱が落ちてる!」 南波は棒を振り回してみたり箱の上でジャンプしてみたりしたが、バナナには手が届かなかった。 その様子を見かねてルイズが箱の上に乗り棒でバナナを叩き落すと、南波は心底感心した表情で手を叩き、 「ルイズちゃん、凄ーい!」 「私にこんな恥ずかしい格好させて……。わざとやってんじゃないでしょうね!?」 ルイズは怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「お腹は膨れたけど、私達帰れるのかなあ……」 俯いて深刻な表情の南波だったが、バナナの皮の山を背にしているためいまいち緊張感に欠ける。 「だ、大丈夫よ! 帰れるに決まってるわ! ……それにいざとなったら私がいるんだから」 自分の言葉に赤面したルイズだったが、 ――アーアアー 「ターザンだ!」 その時既に南波の興味は遠くから聞こえてきた謎の声に向いていた。 「は?」 「凄い! ターザンって本当にいたんだ! こっち来た!」 そして垂れ下がった蔓にぶら下がって2人の前に現れたのは――、 「タバサちゃんにそっくり!」 どう見てもタバサです。本当にありがとうございました。 じー…… さっ じー…… さっ 顔を覗き込んでくるタバサの視線からルイズは必死に顔を背ける。 「なぜ目を逸らすの」 「タバサ、誘わなかったから怒ってるんでしょう?」 「私はターザンだからわからない。でも近々素敵な事が起こる」 肩を竦め無関係なふりをしてさらりと不吉な発言をするタバサ。 「ひぃいいい!!」 「ルイズちゃん、ターザンと知り合いなんて凄い!」 「だから、あんたはわざとやってんの!?」 そんな2人を南波はやはり心底感心した表情で目を輝かせて見つめ、ルイズはまたも怒りと羞恥心で赤面しつつ震えていた。 「こっち」 そう言ってタバサは藪をかき分け2人を先導し始める。 「帰り道も知ってるなんて流石ターザン!」 「……何にせよ助かってよかった……」 「でもルイズちゃんと2人で遭難するの、結構楽しかったよ。また一緒に遭難しようね!」 「まったく、縁起でもない!」 南波を魔法で吹き飛ばしたものの、少し嬉しいルイズだった。 (いつまで歩くのかしら) ルイズがそう思い始めた時、突然ラバサが立ち止まった。 「? タバサ?」 「迷った」 『ええええええ~!??』 「てへ」とでも付けそうな口調でのタバサの発言に、南波・ルイズの悲鳴がジャングル中に響き渡った。 その時、 「ミス・ヴァリエール~!」 そう3人に向かって大声を張り上げる人影――コルベール――がゆっくり降下してきた。 「ミス・ヴァリエール、心配させないでください」 「ミスタ・コルベール……」 「しかし、まさか隣接する人工ジャングル温室に迷い込むとは……」 「何でそんな温室があるのよ!」 翌日……、 「それでね、ターザンがね!」 救出後に書いてもらったサイン片手に心底楽しそうに昨日の話をタバサにしている南波の様子を、ルイズはジト汗を垂らして見ていた。
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「BLAME!」より霧亥を召喚 BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_01 BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_02 BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_03 BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_04 BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_05 BLAME!の霧亥がルイズに召喚されたら? log_06 BLAME! 用語解説
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「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ! 我が導きに、答えなさいっ!!」 数十回の使い魔召喚に失敗し、ヤケッパチ気味にルイズが叫ぶ。 その、ある意味高望み過ぎる内容に周囲の同級生は「おいおい」と思ったとか思わなかったとか。 だが、神か仏かブリミルにか、彼女の願いは聞き届けられたのだった。 宇宙の果てのどこかにいる神聖で美しく強力な「なにか」の前に、召喚のゲートは開いたのである。 ★★★★ 異次元空間に浮かぶ壮麗にして典雅なる白亜の城の、丹精に手入れされた中庭。 そこで『世界の守護者』アンゼロットは日課である午後の紅茶の時間を楽しんでいた。 見た目は12歳程度の美少女に見える。 黒いドレスに映えるどこまでも白い肌。月光を束ねて銀糸にしたかのような流れる髪。 同じく銀色の瞳が、世界の行く末を思ってか儚く潤んでいた。 ふうっ―――と小さくため息をつけば、少女の手の中でユラユラと揺れるダージリンティーの水面。 お茶請けは配下のロンギヌス特別茶菓子班が泣きながら焼いたお煎餅。 紅茶にセンベイ合わすなよというツッコミも涼しげに無視して、外見銀髪少女の大年増は優雅にセンベイ食う。 バリンバリンバリバリバリバリバリリッ――ふう、やはり紅茶のお供はノリ煎餅ですわね――ってなカンジで優雅に。 そんな彼女の前に、突然銀色の円盤が現われた。 ここは腐っても、精鋭部隊ロンギヌスが守る正義の砦アンゼロット宮殿。 シナリオの都合でさえなければ簡単に危険な異物や敵の侵入を許す場所では無いのに、その円盤は平然と宮殿の主である少女の側に浮かんでいた。 レベル∞を誇る世界の守護者アンゼロットは、それが使い魔召喚のための次元ポートである事を瞬時に見抜く。 そして煎餅のカケラほども躊躇も見せず、その中にレースで飾られた黒いドレスに包まれた腕を突っ込んだ。グイっと。 「んー、このへんでしょうかねぇー……っと、コレですわ!」 中でグリグリ手を動かして、ズバッと一本釣りで引き抜いたのはピンクの髪の少女。 いきなり空中に現われた腕に襟首を掴まれて見知らぬ場所に釣れて来られた少女は、驚愕と不安であたりをキョロキョロ見回している。 「なななななななに? なんなのよここ? いったい突然何がおこったのよ!?」 「はーい、落ち着いて下さいルイズさん。私は『世界の守護者』アンゼロット。 今から私がするお願いに、ハイかイエスでお返事して下さいね?」 「へっ?」 「ハルケギニアは世界の敵に狙われています。貴女にはこれから、その敵を倒すために戦ってもらわなければいけません」 「ええっ!?」 「とは言え、今のルイズさんのレベルでは少々心もとないので―――」 今度は何も無い空間にズボッと手を突っ込むアンゼロット。 しばらくグリグリして「えいっ」と引き抜けば制服姿の少年が投げ出され、アンゼロットとルイズの頭上を跳び越し、頭から地面に落とされた。 「ってえなぁ! イキナリ授業中になにしやがんだこのクソ年増!」 ヤバい角度で地面に突っ込んだ男の様子に(なんだか知らないけど生きてるのかしらこの人?)と心配するルイズの前で、 素早く立ち直ってアンゼロットに詰め寄るのは柊蓮司。 一見普通の不良学生だが、その正体は色々下がる不幸学生だ。 以前、使命だと言われて学年が2年生から1年生に下がるという理不尽も体験した事がある。 「まぁまぁ落ち着いて下さい柊さん。まずは紅茶でも飲んでお煎餅でも食べて」 「いやお前煎餅と紅茶の組み合わせはねーだろう普通。まぁもらうけど」 「では紅茶も飲んで落ち着いた所で本題ですが」 「早っ! まだ一口しか飲んでねぇって言うか椅子にも座ってねぇって!」 「使命です。世界の滅びを防ぐために、そこのルイズさんは6レベルまで成長しなければなりません」 柊の剣幕もツッコミも無視して、さっさと使命の説明に入るアンゼロット。馴れた対応だ。 柊の方もそんなアンゼロットには慣れたもので、白いロココ調の上品な椅子をガタガタと引いて、ドカっと行儀悪く座って話を聞く体勢に入った。 「ルイズって言ったか? アンタも座ったらどーだ?」 「えっ、あっ、う……うん」 ちょっと恐い外見の柊に椅子を勧められて、まだ混乱中ながらおずおずと着席するルイズ。 その間にもアンゼロットはマイペースで話を続ける。 「ルイズさんが実戦経験を積み、かつレベルアップしてもらうために柊蓮司さん、 貴方の向かう使命へ彼女を共に連れて行き、そこで一緒に戦ってあげて下さい」 「良いけど、俺とこの子じゃレベルが違いすぎじゃないのか?」 「ご安心を。柊さんが飲んだその紅茶に、ある薬を入れてありますから」 「なっ―――まさか!?」 不吉な言葉に絶句する柊。 以前彼はアンゼロットが紅茶に入れたという薬のせいで、レベルを下げられた事がある。 それなのに同じ手に二度も引っ掛かるあたりが、彼の人の良い所だろう。 「柊さんもルイズさんと同じ1レベルになりましたから、頑張ってレベルアップして下さいね」 にこやかに手を振るアンゼロットの笑顔にヤバイと感じて立ち上がろうとする柊だったが、もう遅い。 突然椅子の下に、底も見えない黒い穴が現われる。 柊と、そしてルイズはそのまま侵魔――エミュレイター――と呼ばれる『世界の敵』が跋扈する戦場へと、次元を超えて落下させられた。 「いってらっしゃーい柊さーん♪」 「コノヤロウ覚えてやがれーっ!!」 「きゃー! なんなのよ、なんだっていうのよー!?」 「ちなみに柊さんが私の事を年増呼ばわりしたので敵のレベルはちょっぴり高めでーす♪」 「うわーっ! しっかり恨んでやがったかー!?」 「はわわわーっ!?」 ドップラー効果と共に遠くなって消える二人の声ってゆーか悲鳴。 何度となく世界を救ったウィザード、下がる男・柊蓮司。 彼は一部事情通の間では『アンゼロットのオモチャ』とも呼ばれているのだった。 ★★★★ その日、ゴーレムが学院を襲っていた。 宝物庫まある階に巨大な拳を打ち込むゴーレムは、30メイルはあろうかという巨大な物だ。 「待ちなさい!」 「……なんだい、アンタは?」 誰もが恐れて逃げ出す巨大ゴーレムの前に立ち塞がったのは、ルイズ・フランソワーズ。 3週間ほど前に行方不明になり、先週突如ボロボロの姿で学院に帰ってきた少女だった。 「魔法も使えないメイジが何の用だい? 世をはかなんでアタシのゴーレムに潰されたいってんなら相談に乗ってやるよ?」 「やれるモンならやってみなさいよ、土くれのフーケ」 「ふん、じゃあお望み通りにしてやるさ!」 ゴーレムの拳がルイズを押し潰した―――かに見えた。 だがルイズは平然とその場に立ったままだ。 彼女の手前数センチで止まった巨大な鋼鉄の拳。当然、それはフーケが止めたのではない。 ルイズの周囲に展開された結界・月衣<カグヤ>。 それは世界そのものが持つ法則を無視して、持ち主を一切の物理法則から守る極小の異世界だ。 「わ、私のゴーレムの拳を防いだ!?」 「……魔法の使えないメイジじゃ、ないわよ」 「なんだって?」 「メイジじゃないって言ったのよ!」 月衣の中から背丈ほどもある長剣を引き抜き、構えるルイズ。 それは≪魔剣使い≫である彼女の力、近接戦用対魔法箒・デルフリンガー。 「……って、俺っち箒扱いかよウイザードの嬢ちゃんよぉ」 「私はウィザード! エミュレイターと戦う、夜闇の魔法使い・ナイトウィザードよ!」 ウィザード業界では、魔力を受けて機動する道具は剣でも銃でも盾でも、果ては宇宙船でも箒なのだからしょうがない。 デルフのぼやきは無視して、ルイズは声高々と宣言した。 ≪魔器開放≫によって真の力を解放したデルフリンガーが輝く。 魔法構造を崩壊させる≪魔力吸収≫の特殊能力が、刃に触れたものから尽く魔力を奪おうと唸りをあげた。 ≪封印されし力≫を解放したルイズの≪虚無の属性≫魔法がその刃に吸収される。 あふれ出るプラーナの力が大地を削って噴き上がり、周囲を黄金の光で照らす。 「ば、ばかな!? なんだいこの力……こんな魔法、わたしは知らない!?」 「受けてみなさい! これが私の召喚した使い魔、世界の守護者から無理矢理与えられた力よ!」 一閃。 ただの一撃で右脇腹から左の肩まで一直線に切り裂かれ、その傷口からボロボロと崩壊してゆくフーケのゴーレム。 自身を構成するための魔力を根こそぎ奪われた結果だった。 「って、召喚してないってゆーかアンタ自分が向こうに召喚されたんじゃんかー!」 「うるさいうるさいうるさーい! エクスプロージョン!」 瞬間、ゴーレムの巨体が大爆発をおこす。 吹き飛ばされたフーケは「あ~れ~」と塀の向こうまで飛ばされていった。 かくしてフーケのたくらみは未然に防がれ、学院の平和はウィザード・ルイズの活躍によって守られた。 「盗賊退治お疲れ様ですルイズさん。ところでまたハルケギニアを揺るがす大事件が」 「ちょ、アンゼロット!? 私は今戦い終わって余韻に浸ってる最中で―――!」 「諦めた方が良いと思うぜ嬢ちゃん。どうせ最後には働かされるんだから」 空間からにょろりと突き出た腕に掴まれて拉致されるルイズとデルフリンガー。 明日はガリアかアルビオンか。アンゼロットにコキ使われるルイズに休息の日は無い。 頑張れルイズ。負けるなルイズ。 いつかハルケギニアを狙う魔王(推定)を倒して、アンゼロットから開放されるその日まで!
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ゴング。 同時にレフェリーを務めるコルベールが、リング上で拳を交える二人を引き離す。 「ゴング! ゴングだ!」 双方は一瞬にらみ合った後に振り返り、肩で息をしながらもしっかりとした足取りでニュートラルコーナーへと戻った。 セコンドにより椅子が出され、一分間で少しでも体力を回復するための道具が次々と取り出される。 赤コーナーの椅子へ座り込んだのは、ルイズ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 現在、HBC(ハルケギニアボクシング評議会)のランキング3位に属する、異例の女性ボクサーである。 ぶかぶかの赤いボクシングパンツに、白い無地のTシャツを着ていた。 「ルイズ、やったじゃねぇか! あいつのフィニッシュブローを破ったぜ!」 セコンドの一人を務めるのは、腹巻に坊主頭、左目の眼帯と異様な格好の中年男性だ。 名を、丹下段平。ルイズによってこのハルケギニアに召喚された、かつて異世界で名を馳せた名ボクサーである。 「あれだけ特訓したんだから、当然でしょ! 次のラウンドで勝負をかけるわ!」 疲労困憊であるにも関わらず、ルイズはニヤリと笑ってみせる。 「動かないで」 腫れ上がったルイズの顔を、魔法で出した氷で冷やしていたタバサが呟いた。 ルイズの級友である彼女もまた、セコンドを勤める一人である。 「それにしても、まさかあんたが本当にここまで強くなるとはね……。 女の癖にボクシングなんてバカじゃないかと思ったけど、あんた才能あるのね」 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーが呆れたように漏らした。 その名の通り、ツェルプストー家の一員である彼女は、ヴァリエール家のルイズとはまさしく犬猿の仲である。 が、ルイズが「ボクシングやるから。絶対やるから。もう決めたから」とぬかし、 周囲を仰天の嵐に巻き込んだ際、初めにそれを応援した人間でもあった。 要は、何だかんだ言って親友なのである。 『微熱』の通り名を持ち、恋に生きると公言してはばからないような女性であるキュルケにとって、 その理由が納得いくものだったからかもしれない。 「そりゃそうでしょ」 ルイズが真顔に戻り、呟いた。 「絶対サイトの仇を討つって決めたから。そう、誓ったんだから」 そうして、向かいの青コーナーを睨みつける。 そこには、不適に笑う元婚約者――HBC現王者、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドの姿があった。 ハルケギニア大陸において、ボクシングとは全てである。 六千年前、ブリミルと呼ばれる人物が編み出したとされるその競技は、瞬く間に大陸全土へと広がった。 現在において、各国の代表を出す国際戦が最早代理戦争と化していることからも、その人気ぶりは知れよう。 そして、貴族の誇りとは、強いボクサーであることであり、即ちボクシングで勝つことである。 現在を生きる全ての貴族の男子にとって、ボクシングで強くなるのは確固たる目標であり、遥か遠い夢だ。 HBC上位ランカーともなれば、下級貴族の三男坊などでも結婚相手は選び放題、生涯の成功は最早約束されたと言ってもいい。 その妻も、夫の試合となれば必ずセコンドに立ち、声を枯らして応援。 勝てば抱き合ってリング上で接吻し、負ければ控え室で涙を流した。 『俺のセコンドに立ってくれないか』というプロポーズの言葉は、最早使われすぎて陳腐であるにも関わらず 『好きな異性に言いたい/言われたい台詞ランキング』で132年連続一位ぶっちぎり独走中。 ちなみにランキングの集計が始まったのは132年前である。 要は。どいつもこいつも、バカみたいにボクシングに燃えているのだ。 ルイズが、使い魔契約の儀式で異世界の二人――平賀才人と丹下段平を召喚したのは、もう二年前のことになる。 二人はやがて、ボクサーとセコンドとしてHBCランキングへ参加。 グローブをはめると身体能力が向上するという、伝説の『ガンダールヴ』のルーン、丹下段平のやたら根性部分に特化した指導、 喋るインテリジェンスグローブ『デルフリンガー』などもあり、瞬く間に上位へと上り詰めた。 しかし、その年のトリステイン王国代表決定戦。決勝戦において、ワルドの繰り出したフィニッシュブロー、 『ライトニング・クラウド・アッパー』によって、終始優位にあった才人は逆転負けした。 ルイズはその時、婚約者と使い魔、どちらのセコンドに着くか悩んだ挙句、賓客用観客席という中途半端な立ち位置に居た。 そして見たのだ。絶対に見た。二人がコーナーで戦っていたせいで、自分以外には誰にも見えなかったろうが、 しかしそれは確かだったとルイズは確信している。 フィニッシュブローを撃つ瞬間、ワルドは才人の足を踏んでいた。 そして、試合終了から三時間十二分後。 平賀才人は、絶命した。 試合から数日後。 ルイズは、ワルドを問い詰めた。何故だ。何故、あんなことをしたのか。 ワルドは哂った。高らかに哂っていた。 「まずい、まずいんだよルイズ。あそこで負けてしまっては、僕はルイズと結婚出来ない。 ヴァリエール家の麗しきご令嬢と結婚するんだ、HBC現王者くらいの立場は必要だろう?」 くくく、と堪えきれない哂いを漏らす。その眼は、何か名状しがたきものに侵されていた。 明らかに尋常では無い様子に、表情を硬くするルイズ。 その腕を突然、ワルドが掴む。 「さぁ、もう十分だろうルイズ。僕はHBCの頂点、ハルケギニアにおける全ての男子の頂点に立ち、九回それを守り抜いた。 かつての伝説、『イーヴァルディの闘士』と並ぶ大記録。ああ、ああもう十分だ、そうだろう? 君と僕は結ばれる。誰にも邪魔はできない。そして君の、『虚無の拳』の力がついに――!」 恐怖。しかし、それ以上にルイズの心を埋め尽くしたのは、憤怒だった。 ルイズは腕を振り解き、ワルドを睨みつける。それを気にもせず、相変わらず、哂い続けているワルド。 ワルド――いや、こいつが何を言っているのかはわからない。 だけど。 これだけはわかる。 「そんなことのために……!」 その目的は、あいつ――才人に比べれば、屑にも劣る最低の代物だということだけは。 「サイトを……!」 あいつを。いつまで経っても従おうとしなかった、小憎たらしい使い魔を。給仕やら、他の女性にすぐ傾く惚れっぽいあいつを。 でも、……どうしようも無い程、どうしようも無くなる程に好きだったサイトを! 「殺したのねっ!」 ルイズは先日の自分を悔やんだ。何故、自分はこいつとサイトを比べて、しかも迷いなんてしたんだろう。 こんなにも。こんなにも、私の気持ちは分かりきっているというのに! 「……いいわ。あなたがもう一度だけ、その王座を守りきったなら、私はあなたの妻になる」 「どうしたんだい? 僕の愛しいルイズ。別に、今すぐにでも僕は構わな――」 「その口で、次に『愛しい』と言って御覧なさい。――その口、引きちぎってやるから」 ワルドは哂い止み、値踏みするような眼でルイズをじろり、と眺めた。 完全に様子は一変し、実につまらなそうな、退屈そうな眼をしている。 「ふん。……成る程。君は僕の、『敵』になったと、そういうことなのかな、ルイズ?」 「ええ。完膚無きまでにね、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド」 「くくく。もう『ワルド様』とは呼んでくれないのだね、僕のルイズ。 だが、まぁいい。僕が次に勝ちさえすれば、全ては問題とはならない。 いくら君が反対しようとも、前人未到のHBC王座十連続防衛を果たした男となれば――君のお父上にほんの少し働きかければ済むことさ。 それで? 残りの一回、君は誰をけしかけるつもりなのかな?」 馬鹿にしきった様子のワルドを前に、しかしルイズは動じなかった。 眼を煌々と光らせ、胸を張り、怒りの炎に身を焼いて、誰よりも誇り高く、彼女はそこに居た。 「私よ。私自身が、あなたに挑む」 「セコンドアウト!」 ロープを乗り越えながら、ルイズのセコンド達が次々に声をかける。 「いいか、ルイズ。足だ、足を使え。かき回した所に、お前のフィニッシュブローを叩き込んでやりな!」 「……本で読んだ言葉。あなたに。……Stand, and Fight.(立って、そして戦いなさい)」 「頑張りなさいよ。サイトのためなんでしょ?」 ルイズは僅かに微笑みをこぼし、そして相対する敵へと向かっていった。 着ているTシャツを握り締める。かつて、彼女の使い魔がこの世界に召喚された時に着ていたものだ。 「サイト」 何かを噛み締めるように、ルイズはその使い魔の名前を呟く。 「らぅーん、えいと! ふぁいっ!」 ゴング。 開幕直後、ワルドは冷静に牽制の左を放つ。 速く、鋭く、確かな芯のあるジャブ。『エア・ニードル・ジャブ』。 『閃光』の二つ名の元になった、ワルドの主武器の一つである。 ルイズも動じず、ステップとガードで対処する。 しばし、静かな攻防。盛り上がる観客席とは正反対に、凍りついたような緊張感がリングには満ちていた。 ――と、その空気を打ち破るかのように、ワルドが大きく下がる。 そのまま腕を広げ、オープンガード。そして、あろうことか対戦相手であるルイズへと話しかけた。 「いや、驚いたよルイズ。まさか、君が――君自身が! 僕に挑むと聞いたときには、正直正気を疑ったがね。 僕の『ライトニング・クラウド・アッパー』を破るとは、やるじゃないか」 『ライトニング・クラウド・アッパー』。ワルドが幾多もの敵をリングに沈めてきた、彼の必殺技である。 その拳は相手に命中すると同時に、グローブすら焼き尽くす強力な電撃を発し、その動きを止める。 ガードも不可能、当たったらそこで終わり。まさしく、『フィニッシュ』ブローだ。 (尚、スレ住人の皆さんは技のあまりのネーミングセンスに眉をひそめていることだろうが、 これは筆者の趣味では無く、名作ボクシング漫画――アレをボクシングと呼称するのなら、という前提だが―― 『リングにかけろ』へのリスペクトである。知らない人はググってwikipedia。すげーネーミングだから) ルイズは警戒。試合中に対戦相手に話しかけるなど、正気の沙汰ではない。コルベールが困っている。 「驚いたよ。本当に驚いた。まさか、『虚無の拳』の力を、僅かとはいえ引き出すとはね。 それに敬意を表して――僕の、正真正銘、本当の本気を見せるとしよう!」 そう言い放つと、ワルドは突然詠唱を始める。 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 ルイズはワルドへと突き進んだ。まずい。何の詠唱をしているのかはわからないが、本能が告げている。 あの呪文を、完成させてはならないと。 「っ!」 ワルドの顔面へ、右ストレートを放つ。 そして、誰もがその眼を疑う光景。 その拳が、ワルドの頬を『貫通』した。 「!」 驚愕に凍り、動きが止まるルイズ。面前のワルドの姿が、かき消える。 そして、 「ユビキタス。――風は、遍在する」 ルイズの背後。そこに、五人のワルドが立っていた。 振り返ったルイズの顔が、更なる驚愕で歪む。 「風の吹くところ、何処となくさ迷い現れ、その距離は意思の力に比例する」 ルイズは混乱しながらも、必死でジャブをうつ。 涼しい顔でそれを防ぐ、ワルドの一人。 「物理的影響力を持ち、ある程度の衝撃なら消えることもない。そのそれぞれが意思を持っている。 ――どうだい、僕の愛しいルイズ? これが僕の、本気だよ」 一人がルイズのパンチをガードしている間に、もう一人が懐に潜り込み、ルイズの気をそらす。 更に二人が牽制のジャブを放つ。 「くっ!」 ルイズは必死で、それをかわそうと『イリュージョン・ステップ』を使う。 自分自身の幻影を作り出し、敵を翻弄する足捌き。 先ほど『ライトニング・クラウド・アッパー』を破ったのもこの技だ。 しかし、 「無駄だ!」 そして、最後の一人はルイズの死角へと回り込んで―― 「これで終わりだ! 『エア・ハンマー・フック』!」 「――――!」 空気の塊を伴った拳は、その力を元の数倍にまで増大。 ルイズの顔面を捉え、悲鳴をあげることすら許さず数メイルの距離を吹き飛ばした! きもちいい。 なんだか、すごくきもちいい。 めのまえがぐにゃぐにゃする。なにもみえないや。 ああ、ねちゃいそうだなぁ。 「――――!」 なんだか、とおくでたくさんのひとがさわいでる。 うるさいなぁ。 わたしはもう、ねたいのに。 「――――!」 ああもう、ほんとうにうるさい。 たちあがることなんて、もうできないのに。 「――って!」 え? いま、なんて……。 「立って! ルイズ!」 リング上、ピクリともしないルイズ。勝ち誇り、ロープへもたれかかるワルド(×5)。 それを見つめながら、キュルケは呻く。 「分身……。ボクシングで五対一なんて、勝てるわけがないじゃない……!」 「…………」 無言のままのタバサ。 3。 「ちくしょう……。ルイズは、ルイズはあんなに頑張ったのによぅ……!」 丹下は俯き、何かを堪えるように歯を食いしばっていた。 「…………」 無言のままのタバサ。 5。 「……限界ね」 倒れたまま動かない姿を見、キュルケがタオルを取り出す。 止める丹下。 「待て! そいつぁダメだ! ルイズを、あいつの気持ちを裏切るつもりか!」 「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」 「せめて、10カウントの間は――」 「一刻を争う状況だったらどうするつもりなの!? その数秒が、あの子を殺すかもしれないのよ!」 「…………」 無言のままのタバサ。 8。 「ダメだ! そいつはやらせられねぇ!」 丹下がキュルケに、タオルを投げさせまいと食らいつく。 そうしながらも、叫ぶ。 「立(て! 立つんだ、ルイズ!)――」 「立って!」 割り込むかのような突然のタバサの絶叫に、丹下は言葉を止められてしまう。 タバサはルイズを見つめ、何かを訴えるように、目に涙を浮かべながらも叫ぶ! 「立って! ルイズ!」 その一言で、心臓に火が入った。 足が動かない。 頭はグラグラだ。 体中が痛みを訴えている。 ――それでも。 その全てを屈服させて、ルイズは立ち上がった。カウントは、9。 霞む視界の中、リング下のタバサを捉える。 そちらに向けて、頷いた。 ――そうだ。 驚くワルドが見える。 ――負けられない。 足を一歩、動かす。 ――絶対に、 「負けないんだからっ……!」 ワルド達が、再びルイズへ襲い掛かる。 先手を取り、重い左手を必死で動かして、ジャブ。 どうしようもなく鈍いそれを、ワルドは苦も無くガードした。 先ほどと同じ流れか、と誰もが思ったその瞬間。 ガードをしたワルドが、跡形も無く消え去っていた。 「な――!」 驚きで動きを止めるワルド達。馬鹿な。あの程度のパンチで、分身が消え去るなどあり得ない。 更に連続でルイズのジャブが放たれる。 一発。一人のワルドが消える。 一発。また一人のワルドが消える。 残るワルドは、二人。 「馬鹿な、そんな筈は!」 混乱するワルド。そこに、ルイズがぽつりと、だが確かな強い声でその技の名前を告げた。 「――『ディスペル・ジャブ』」 「っ! 『解除』したというのか、僕の分身を!」 更に、一発。更にワルドが消えうせる。 残るは本体。たった一人の、ワルドのみだ。 「僕は……僕は負けないっ! 『虚無の拳』を手に入れ、ボクシング界の全てを手に入れるまで、決して!」 錯乱したワルドが、ルイズへ吶喊する! 「あ、ああああああああああああああっ!」 再び、『ライトニング・クラウド・アッパー』を放つ。 決まれば、間違いなく終わる。その威力を秘めた一撃。 しかし。その技は既に―― 「ああああああああああああああっ!」 命中! ワルドの眼に、電撃に撃たれながら吹っ飛んでいくルイズの姿が映る! 「あああああああああああああ、ああ、あ……?」 再び倒れるルイズ。電撃で体中が焼け焦げ、見る影も無い。 「あ、ああ、は、ははははははは! 勝った! 『虚無』に、伝説に、僕は勝ったんだ!」 ワルドは気づくべきだった。 ルイズにその拳が命中した――否、そう見えた瞬間。 しかしそれに反して、その手には何の感触も無かったことに。 倒れていたルイズの姿が消える。 「ははははははははっはああははは、はぁ? あれ?」 『イリュージョン・ステップ』。 そして、 「喰らいなさいっ! サイトの――仇っ!」 ワルドの目の前から放たれた拳は、 「『スマッシュ』――」 その顎にクリーンヒットし、 「――『エクスプロージョン』!」 大爆発によって、ワルドを上空十数メイルまで吹き飛ばした! 一瞬の沈黙。 その会場にいた全ての人間が、歓声一つ上げず、、空中のワルドを見つめていた。 ぐしゃり。 何かが潰れるような音と共に、ワルドがリング外へ顔面から墜落する。 コルベールがそれを覗き込み、――その両腕を、頭上で交差させた。 「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 歓声が爆発し、ゴングはこれでもかと鳴り響く! 「やった! ついにやったぜ、ルイズ!」 「……やった」 「あの、バカ……! 心配させて……!」 コルベールがルイズの腕を、高々と掲げる。更に音を増していく観客の声援。 腕を下ろされたルイズは、その中を、ふらふらとニュートラルコーナーへ戻る。 「っ! タンゲ! 椅子!」 「言われるまでもねぇわっ!」 出された椅子に、崩れるように座り込むルイズ。 「ちょっとルイズ? 体は、大丈夫なの?」 「待ってろ。今、わしがとっておきの薬を――」 「要らない。水のメイジが医務室からすぐに来る」 「ルイズ? ……ちょっとルイズ? ルイズ!」 「おいルイズ! 返事しねぇか!」 「…………救護班、早く!」 ねぇ、サイト。 やったよ。 私、あんたの仇を討った。 サイト。 もう一度だけでも、あんたに会いたいわ。 言いたいことがあるのよ。 前には言えなかったけど、今なら、素直になれそうな気がする。 でも。 燃え尽きちゃった。 燃え尽きちゃったわ。 真っ白にね……。
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『ユーディーのアトリエ~グラムナートの錬金術師』 から二十歳の頃のヘルミーナを召喚 公式HP ヘルミーナとルイズ1 ヘルミーナとルイズ2-1 ヘルミーナとルイズ2-2 ヘルミーナとルイズ3
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「マシンロボ クロノスの逆襲」のロム・ストールが召喚される話 ルイズと剣狼伝説-1 ルイズと剣狼伝説-2 ルイズと剣狼伝説-3 ルイズと剣狼伝説-4 ルイズと剣狼伝説-5 ルイズと剣狼伝説-6 ルイズと剣狼伝説-7 ルイズと剣狼伝説-8 ルイズと剣狼伝説-9 ルイズと剣狼伝説-10 ルイズと剣狼伝説-11 ルイズと剣狼伝説番外 ルイズと剣狼伝説第二部-1 ルイズと剣狼伝説第二部-2 ルイズと剣狼伝説第二部-3 ルイズと剣狼伝説第二部-4 ルイズと剣狼伝説第二部-5 ルイズと剣狼伝説第二部-6 ルイズと剣狼伝説第二部-7 ルイズと剣狼伝説第二部-8 ルイズと剣狼伝説第二部-9 ルイズと剣狼伝説第二部-10 ルイズと剣狼伝説第二部-11 ルイズと剣狼伝説第二部-12
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前略 ちい姉様 マジカルメイドが暗躍したお陰で、無事…いや無事ではありませんが何とか使い魔を召喚することが出来ました。 ええ、出来たんです。 ですが……何というか人間の子供を呼び出してしまったんです。それも二人も。 『見た目』だけはとても美しい双子の少年と少女が使い魔となったんです。 そう、なったんですが……わたし、これからの学院生活がとても不安です。 ぶっちゃけ、家に帰ってもいいですか? いいですよね? 草々 ルイズの憂鬱(魔法少女ラジカルイズ~双子編~) 「ミス・ヴァリエール!」 ある日、教室に呼び出されたルイズは、渋る双子の使い魔をつれて約束した時間より少し早くやって来た。 教室に入るや否や待ち構えていた中年の女性教諭、シュヴルーズが怒鳴りあげたのだ。 「あの、ミセス・シュヴルーズ。 何か御用ですか?」 覇気もなく気だるげに答えるルイズにますますシュヴルーズは声を荒げる。 「何かじゃありません! ミス・ヴァリエール! あなたは使い魔にどういう教育をしているのですか!」 「はぁ、その、スミマセン」 ヒステリックな怒鳴り声に取り合えず謝罪の言葉を告げたルイズ。 どうやらまたこの双子が何かをやらかしたらしい。 今度は何だろうか。 またモンモランシーの使い魔の蛙に何かしたのか、でも蛙の御尻にストローさして空気を入れるなんて昨日やって怒られたばかりだ。 あるいはギーシュの使い魔のモグラの餌(ミミズ)に釣り針を仕掛けて釣り上げたことか、はたまた学院長の使い魔のネズミをまた罠にはめたのか。 思い当たる節が沢山ありすぎてよく分からない。 「錬金の授業で使う粘土に爆薬を仕掛けるなんて! こんな悪戯初めてです!」 ルイズは、『ああ、どんどん過激になっているなぁ』と思いながらもひたすら平謝りを繰り返す。 それにも拘らず、 の怒りはまだ収まらない。そう、 がルイズを呼び出すのは何も初めてというわけではない。 双子が悪戯を仕掛けるたびに、コルベールやギトー、オスマンにロングビル等、学院に努めている教職員から一通り注意を受けているのだ。 その度に彼女は下げたくもない頭を何度も下げたのだ。 「昨日も、ミスタ・コルベールの髪を全て燃やしたではないですか! いいですか! ちゃんと教育なさい!」 コルベールのあの可笑しな鬘はそういう理由だったのか。ルイズは心の中で納得すると再び頭を下げる。ちゃんと謝罪の意思をのせて。 「スミマセン。 ほら、あんた達もあやまんなさいよ!」 この日、同席した双子の頭を下げさせようとグイグイと押すが彼らはそれに反発するのだ。 そしてあろうことか、 「ばーか、はーげ、タコ坊主ー」 「タコなら海ん中でチューチュースミ吐けー」 暴言を吐くのだ。 ルイズの短い堪忍袋の緒は当然の如くブチキレた。 「ちゃんとあやまんなさいッ!」 怒りと共に振るわれた杖から奔るはずだった魔法。だが忘れてはならない。彼女が魔法をうまく使えないという事実を。 激しい爆発が教室中を蹂躙する。響き渡る4人の悲鳴。だが奇跡的に皆無傷だった。 そして当然のようにルイズは教室の清掃を命ぜられたのだが、双子はというと当然の如くその場から逃げ出したのだった。 拝啓 エレオノール姉様 わたしはちゃんと学院を卒業できるのでしょうか? とても不安です。 だからお願いします。家に逃げ帰っても怒らないで下さい。 敬具 数日後…。 ルイズが部屋で双子と何ともいえない時間過ごしているとを唐突に扉を叩く音が聞こえるではないか。 あまりにも激しく叩かれる扉。煩くて敵わないと扉を開けるとそこにはモンモランシーがに鬼気迫る雰囲気で仁王立ちをしている。 「少し時間いいかしら?」 そう言うとモンモランシーはルイズの返答を待たずして部屋にズカズカと入って来た。 用件をルイズが聞き出そうとする前に彼女は口を開いた。 「ルイズ、使い魔にどういう教育しているわけ? ギーシュがノイローゼになってるんだけど…どうしてくれるの」 モンモランシーの言葉にはてと首を傾げるルイズ。 その様子がモンモランシーを苛立たせる。 「ちょっと! しらばっくれる気?」 モンモランシーが言うには…… 学院某所。 その日、ギーシュは一人、使い魔のヴェルダンデに餌をやっていた。すると背後から不穏な影がするすると近づいてくるではないか。 音もなくギーシュの背後にピタリとくっつくと耳元で吐息を掛けるように双子の、少年のほうが声をかけた。 「ねぇギーシュさん。 遊ぼうよ」 「あひゃぁ!」 突然のことに飛び上がらんばかりの勢いで驚いたギーシュだったが、双子の姿を認めるとすぐさま使い魔を己が背に隠した。 「も、もうヴェルダンデをお前達の玩具にはさせないからな!」 おっかなびっくり双子に向かって啖呵を吐いた。だが双子はそんなことは気にも留めない。 今度は双子の少女のほうがギーシュの耳元で囁いた。 「何を言っているのかしら? 私達はギーシュさんと遊びたいの? ね、兄様」 「うん、姉様の言うとおりだからね、ギーシュさん」 使い魔を玩具にされないと分かって一瞬だけ安堵したギーシュ。だが疑問が一つ浮かぶ。 「僕と遊ぶって……何をするんだい?」 ギーシュの問いに双子は満面の笑みを浮かべて言い放った。 「んー、今日はお医者さんごっこでいいよね、姉様?」 「そうね。 せっかく本式の道具一式そろえたんだもの。 それにしましょう」 途轍もなく嫌な予感がするので回れ右をしてその場を立ち去ろうとしたギーシュだったが… 「こ、これからケティと遠乗りの約束が…」 そうは問屋が卸さない。少年がギーシュの服の襟をがっしりと掴んだ。ちなみにヴェルダンデはとっくに逃げていた。主を見捨てて……。 「姉様、きっと普通のお医者さんごっこが嫌なんだよ」 「まぁ兄様、本当かしら? だったら……」 ――大人のお医者さんごっこにしましょう―― そういってギーシュの眼前に出されたものは18歳未満の人には説明することが憚れる器具の数々。 「大人のお医者さんごっこー♪ 僕らのテクにかかればその愚息も昇天だよ?」 「さぁ、天使を呼んであげましょう……」 哀れ。 ギーシュはもはや逃げることなど出来ない。 「やめろ! 助けてケティ! モ、モンモランシーでもいいから!」 ああ、その悲痛な叫びは届かない……。 「い、いやぁぁぁぁ!」 そんな事があったらしい。 「あれ以来ギーシュはうわ言の様に『助けてケティ』って繰り返すのよ!」 ギリギリとモンモランシーの歯軋りが聞こえてくる。 「何で!? どんなプレイしたか知らないけど、何故助けを求めるのが私じゃないのよ! ふざけないでよね!」 私もあんな事ギーシュにしてみたかったのにと、興奮して怒鳴り散らすモンモランシーを尻目に、双子はというと……。 「弱いわね、兄様」 「そうだね、姉様。 この程度で泣いていたらこの先辛いことがイッパイ、イッパイあるよ」 シエスタから貰ったペロペロキャンディーなめながら、達観した様子で佇むのであった。 それがルイズの逆鱗に触れたのは当然である。 「あやまんなさいッ!」 ルイズは学んだ。怒りに我を忘れてはいけない。だから魔法は使わず杖で双子の頭を殴ったのだ。 うわぁーんと泣き声をあげる双子の姉兄。ルイズはきっと懲りずにまた何かやらかすだろうと、遠い目をして考えていた。 親愛なるワルド様へ この先の学院生活がとても不安です。比喩でも過剰表現でもありません。 例え中退してもわたしを貰ってくれますか? デルフリンガーに相談しても、 「剣であるオレにどうしろと?」 そんなことばかり言って取り合ってもらえません。 そんなルイズの神経をすり減らす双子の使い魔であったが、ルイズを癒してくれる時間があったのだ。 「寝顔は天使そのものね」 子供らしく可愛らしい寝顔、多くの人はそれに癒されるだろう。 剥製の作り方と銘打たれた本と囚われた梟と土竜の姿さえなければの話だが……。 エピローグ(?) 「ねー、ルイズさん」 「圧力釜どっかにないー?」 「あー…シエスタの所に行けばあるんじゃない?」 読書に勤しむルイズに話しかける双子。本から目を離すことなく投げやりに答える。 「はーい。じゃあ聞いてくるわ」 「ねぇ、アレ持った?」 一瞬のやり取り……これでルイズは察した。 「…石礫とか釘詰めたら爆殺するからね」 その言葉にブーブー文句を言ってくるが最早ルイズは気にしない。 前略 ちい姉様 色々あったけど最近慣れました。 家に帰らなくても恐らく大丈夫なはずだと思います。 いろいろあるけれど、わたしは元気です……多分。 草々
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スクウェア「Brave Fencer 武蔵伝」からムサシ召喚。 第一章~旅立ち~ BRAVEMAGEルイズ伝第一章その1 BRAVEMAGEルイズ伝第一章その2 BRAVEMAGEルイズ伝第一章その3 BRAVEMAGEルイズ伝第一章その4 BRAVEMAGEルイズ伝第一章その5 BRAVEMAGEルイズ伝第一章その6 BRAVEMAGEルイズ伝第一章その7 BRAVEMAGEルイズ伝第一章その8
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前ページ次ページモニカがルイズに召喚されました 彼女は気が付くと青空の下でたくさんの人間に囲まれていた。 みんな一様にマントを羽織って目の前に居る人物をあざ笑っていた。 「子供だ。ルイズが子供を召喚したぞ」 「流石はゼロのルイズだ。 とてもじゃないが真似できないぜ」 「真似したくないけどね」 見た所、学生のようだ。 それにしてもなんて程度の低い。 他者を貶める事でしか自分の優越感を守る事が出来ない、まるで子供だ。 人間の教育がどんな物なのかは知らなかったが彼女の周りには道徳観念のよく出来た人間 ばかりだった。 つまるところ人間に対する過大評価があった訳だが。 『私が飛べない事で苛められたのはいつの事だったのだろう?』と、ここまで考えて思考 を中断する。 もしかしたらここはとんでもない辺境なのか、もしくは異世界である事も考えた。 だとしたら自分がフェザリアンである事を話すのもまずいのかもしれない。 相手がどんな文化を持っているのか分からないのだ、もしかして精霊使いやファザリアン を目の敵にしているかもしれない。 ちょうど総本山に帰る途中で、翼を隠せるようなローブを着ていたことに安堵した。 注意深く、周りの人間の指を確認する。どうやらリングマスターは居なさそうだ。 ルイズがモニカを召喚しました 第1話 "ゼロのルイズ"と呼ばれた彼女が『やり直しを要求します』とか"ミスタ・コルベール"と呼 ばれる人物―多分ここの責任者だろう―が『使い魔』とか『神聖な儀式』とか『伝統』と か『進級』がどうとか言っている。 大体自分の置かれている立場については大体分かったが、見知らぬ他人の進級の為に使役 される立場に落とされるなんて冗談ではない。 契約しなきゃ留年だというなら留年して不幸になってしまえー 「アンタ誰?」 「礼法がなってないわ。 見た所学生のようだけど、人に名前を聞く名前を聞くときは自分から名乗るものだって習わなかったの?」 「……ルイズよ。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 "de" つまり貴族様である。 モニカも長ったらしい名前を聞いて偉そうな態度で接してくるのは偉そうな身分の人間だ からだと理解した。 だいたいが長ったらしい名前の人間は性質が悪いと学習済みである。 「モニカよ。モニカ・アレン。 私をここに呼び出したのはあなたかしら?」 「そうよ。 あなたは私のサモン・サーバントの魔法で呼び出されたんだから私の使い魔 になりなさい」 いきなり命令形。 流石貴族様だ。 だがモニカにとってむしろ話の内容の方が重要だった。 機械の補助と精霊使い2人で行った英雄召喚のような大規模魔法を学生の少女が行ったと 言うのだ。 これが本当ならもう異世界大決定である。 おそらく自分の知らない未知の魔法技術なのだろう。 いや、この世界の魔素の密度から調査しなおす必要があるかもしれない。 「それにしても、とんだ野蛮な地域に呼び出されてしまったものだわ」 「ややややや野蛮ですって?」 ため息をつくモニカ。 怒りでぐるぐるになるルイズ。 「神聖な儀式で、人間を召喚して働かせる民族の何処が野蛮じゃないの?」 「だってあんた平民じゃない。 平民が貴族の為に働くなんて当然の事よ」 「キシロニア連邦は民主主義だから貴族と言う身分が無いだけ。 私は平民じゃないわ」 「キシロニアレンポウ? 何処の田舎よ」 「自分が知らない地名を田舎と決め付けるのは文明人としてどうかと思うわ」 「じゃあ何処の国よ?」 「国の名前よ。 王や貴族と言うものの変わりに議会政治で国を運営しているわ。 人口は少なく見積もって400人位かしら?」 「小国も良い所じゃない!」 「それは仕方ないと思うわ。 戦争で大分死んでしまったもの。 今は復興中よ。」 時空融合計画で大多数が他の世界へ避難した事は言わない。 流石に信じてもらえないだろうから。 「じゃあ、あんた魔法使えるの?」 「勉強すれば普通使えるものでしょう?」 「嘘おっしゃい! 平民に魔法が使えるわけ無いじゃない! 嘘をつくならもっともっともらしい嘘をつくことね!」 どうやらここでは一握りの人間しか魔法を使う事が出来ずしかもそれが遺伝するらしい。 魔法が使えるものをメイジと言い、それが貴族階級を作っているようだ。 異世界へ渡った人間達が"グローシアン"と言う特権階級を作り上げた事を考えると人間と 言うものは実の所どこも変わらないのではないか? とも思う。 「とにかく私は王家に連なるヴァリエール家の三女なんだから平民なんかとは違うのよ」 「なら貴族の何処が優良種なのか証明して見せて欲しいものね。 『貴方』が『私』に勝てそうなのは年齢くらいに見えるのだけど?」 ルイズは考えた。 『ゼロのルイズが使い魔の平民に論破されてやんの』とか言う野次は当然無視である。 彼女自身そもそも魔法が使えない。 年下相手に取っ組み合いで勝っても大人気ない。 編み物で勝負とか言っても受けてもらえないだろう。 しばらく考えて勝てそうなものを見つけたので言ってみる。 「えっと…そう!胸とか!!」 13歳に勝ち誇るな。 どんぐりの背比べみたいな洗濯板を見ながら内心『2年後を見てなさい』とか思いつつ モニカは話す相手を変える事にする。 「あなたじゃ話にならないことは分かったわ。 この"神聖な儀式"の監督をしているのはそちらの先生かしら?」 「ミス・アレンだったかな? 私がこの生徒達を引率しているジャン・コルベールだ」 「じゃあミスタ・コルベール。 私が彼女と契約しなかった場合どうなるか教えてちょうだい」 このコルベールという人物は学園の中でもルイズに同情的な教師の1人だ。 彼女が影で努力をしているのを一番評価しているのもおそらく彼だろう。 加えて魔法は破壊だけに使われるべきではないとの信念の持ち主で、聞いた事も無いよう な遠い国から召喚されたであろう目の前の少女にも同情的な想いなのであった。 詰まるところ苦労人であった。 おかげで生徒から影でコッパゲと陰口を叩かれる程である。 しかしながら自分の立場は教職なのであり目の前の少女に使い魔になってもらわなければ ならない。 しかたなく彼は対話を開始する。 「彼女は留年と言う事になるな」 「留年させておけばいいじゃない」 にべも無い言葉。 くじけそうになったがコルベールは話を続ける。 「いや、しかしだね…」 「むしろ使い魔を召喚する力量を問うのが今回の試験の目的なのだとしたら私を召喚した 時点で十分なんじゃないの?」 「…古今東西、人を使い魔にした例はないが、春の使い魔召喚の儀式のルールはあらゆる ルールに優先するんだ。 従って彼女の呪文で召喚されてしまった君が契約するまでが試験対象になる」 「例外は?」 「ない」 「ルールじゃ仕方が無いわね。 じゃあ、そのルールを制定した人か、ルールを管理している人に会わせて頂戴。 古今東西、人を使い魔にした例は無いと言ったわね? 本当に異邦人が召喚された場合に相手の意思を無視してまで使い魔にしなければなら ないのか確認を取るわ」 「あー…そんなに契約が嫌かね?」 「その契約の呪文はあんなドラゴンも制御下に組み入れてしまうのでしょう? 絶対に魅了の呪文が織り込んであるわ。 お断りよ」 示す先には風竜の子供、確かにあんなのが暴れだしたのなら、ただじゃすまないだろう。 コルベールは少女の観察眼に舌を巻きながら仕方なく契約の一時延期を告げるのであった。 /*/ 流石に部外者を学園の中に入れるのに書類が必要だと言われて30分ほど待たされた後に秘書の女性に案内されて階段を上り始めた。 秘書の名前をロングビルと言うらしい。 どこか作った様に感じたが、貴族とか平民とかそんな環境では地のままで過ごすのも難しいのだろうと勝手に解釈した。 長い階段を抜けて建物の最上階―――学長室まで通される。 席には年をとった学長と思われる老人と、未契約の使い魔に対して監修の義務があるコルベール。あと留年が掛かっている当事者のルイズ。 「ワシがこの学院の学院長を務めとるオスマンだ」 「聞いていたのより真面目そうな人ね」 「………ミスタ・コルベール。 ワシの事をなんと言って話して聞かせていたのかね?」 「いえ、事前に話を聞かせていたのはミス・ヴァリエールです。 今後、使い魔として共同生活を送る可能性があったので、私が交流を推奨しました。 もっとも間違っているとは思わなかったので否定しませんでしたが」 「おぬしがワシの事をどう思っとるのかよーく分かった」 オールド・オスマンが今期の査定を付けはじめる。 もちろん場の空気を和ませる為のギャグだ。 目の前の男が慌てふためくのを見るとついやりすぎてしまうのは仕方あるまい。 ほーれほーれ。 「そろそろ本題に入らせてもらうけどいいかしら?」 「ああ、すまなかった」 「『春の使い魔召喚の儀式において、それが何者であれ、呼び出された以上、術者の使い魔としなければならない』 このルールは人にも適応されるものなのかしら?」 「春の召喚儀式と言うか…サモン・サーバントの呪文はお互いがお互いに必要な者を引き合わせる呪文じゃ。 仮にサモン・サーバントを唱えなおしたとしても、お前さんの前にゲートが開くだけじゃな。 そして召喚儀式の本義は使い魔によって本人の適正を確定して専門課程に進む為の準備を促す事じゃ。 結局、お前さんが使い魔をやらない限り彼女は留年する事になるの」 「一つ付け加えるなら、サモン・サーバントの魔法は対象を指定できないと言う特性があります。 先天的に適性が決まっていてミス・ヴァリエールがあなたを指定したという訳ではないのです。 私としても彼女が留年してしまうのも忍びない。 どうか契約を行ってはいただけないでしょうか?」 「それは、いつまで?」 「一生です」 「話にならないわ」 捨て犬のような目でコッチを見てくるコルベール。 いや、お前がそんな顔しても可愛くないから。 コッチ見んな。 「大体、貴族でもない人間がこうして交渉の場を作ってもらったって言うのにごちゃごちゃ屁理屈をならべないで頂戴。 ちゃんと可愛がってあげるから、私の使い魔になりなさい」 彼女の名誉の為に補足しておくと性的な意味ではない。 「じゃあ、今抱えている問題点をあなたにも分かるように例え話をする事にしましょう。 あなたは貴族だと言っていたから自分の領地があるはずよね? 例えば隣の領地を治める領主があなたの領地に居る平民を攫って行ったらあなたはどうするかしら?」 「決まってるじゃない、ツェルプストーになんか小鳥一匹でも渡すもんですか!」 「…多少私怨が混じってる気がするけど執政者はそう考えるのが普通よ。 それに私は議長の娘と知り合いだから今頃大変な事になっていると思うわ」 この世の終わりのような顔をするルイズ。 召喚した相手が、どこかの国の代表の娘のご学友だと分かったからだ。 更に言うと、その国の領主は他国に小鳥一匹渡す気が無いような人間がそろっているらしい。 下手を打つと後々国際問題になりかねない。 例えばキシロニア連邦とトリステイン王国を結ぶ航海路が発見されたとかした場合だ。 何しろ奴らは人口400人になっても戦争しているような戦闘民族なのだから 「あー、しかたないかの」 「ちょ、ちょっとだけ、もうちょっとだけ待って下さい。 ミス・ヴァリエールはとても勤勉な生徒なんです。 実技の成績はどん底ですが魔術理論・地理・社交・宗教、すべての筆記試験で優秀な成績を残しています。 週末も街に繰り出すことなく実技の訓練をしている事を知っています。 そんな彼女の努力がふいになってしまうのは忍びない。 もう一度考えてはくれませんか?」 留年して来年サモン・サーバントを唱えても現れるのは目の前の少女。 つまりここで相手の了承を得なければ永遠に進級できない不可避の罠なのだ。 「…使い魔と言うのは必ずコントラクト・サーバントを受けないといけないのかしら?」 「コントラクト・サーバントを受けると使い魔のルーンが体に刻まれる。 遅かれ早かればれてしまうだろうね。 そして使い魔を獲得せずに進級した生徒と言う前例を作るわけには行かない」 「じゃあ、使い魔のルーンは足にあることにすればいいわ。 お風呂には一人ではいる事にすればばれる事はないでしょうし あなたが卒業するまで使い魔のフリをする事にするわ。 使い魔召喚の儀式が2年生への進級試験を兼ねているのだからあと2年間ね。 それでいいでしょう?」 「いいの?」 「別に私もあなたを困らせたくって契約を拒否しているわけじゃないもの。 私が2年我慢すればあなたの一生が助かると言うならそうするべきだわ。 …あとはこの2人をどう説得するかだけど…」 相変わらず捨て犬のような目をしているコルベール。 縋る様な目をしたルイズ。 2人の視線をうけてオールド・オスマンは深いため息をついて、それからこう言った。 「わしゃ何にも聞かなかった事にするよ。 進級おめでとう。 ミス・ヴァリエール」 前ページ次ページモニカがルイズに召喚されました
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※カオスシードより飛天石を召喚 ルイズ風水回廊記-01 ルイズ風水回廊記-02